野生の風(村山由佳・1995年)
修子
普段は質素に、たまには豪華に。
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静かな島で、夫と穏やかで幸福な日々を送るセイの前に、ある日、一人の男が現れる。
夫を深く愛していながら、どうしようもなく惹かれてゆくセイ。
やがて二人は、これ以上は進めない場所へと向かってゆく。
「切羽」とはそれ以上先へは進めない場所。
宿命の出会いに揺れる女と男を、緻密な筆に描ききった哀感あふれる恋愛小説。
(「BOOK」データベースより)
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第139回直木賞受賞作ということで手にとってみました。
「切羽」と聞いて思いつくのは「切羽詰る」という言葉。
でもこの本の題名は違っていて、
「トンネルを掘っていくいちばん先を、切羽(きりは)と言うとよ。
トンネルが繋がってしまえば、切羽はなくなってしまうとばってん、
掘り続けている間は、いつも、いちばん先が、切羽」
と物語の終盤に出てくる。
この題名の付け方、素敵だなって思いました。
だってこの話は一言でいうなれば、「切羽な二人の物語。」だから。
とある島(舞台は九州にあるとある島だそうだ)での話が淡々と語られる。
島ながらの閉塞感が淡々さを助長しているよう。
とは言え、淡々の中身は深いんです。
さらっと読むと後に残らない感じだけど、奥深さを感じる本でした。
最後に主人公の友人の言う「妻って人種はきっと妖怪なのね。」というのが言いえて妙でした。
私も妖怪なのかしら?(笑)