2009.02.20

ジェネラル・ルージュの凱旋(海堂尊･2007年)

修子

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桜宮市にある東城大学医学部付属病院に、伝説の歌姫が大量吐血で緊急入院した頃、不定愁訴外来の万年講師・田口公平の元には、一枚の怪文書が届いていた。
それは救命救急センター部長の速水晃一が特定業者と癒着しているという、匿名の内部告発文書だった。
病院長・高階から依頼を受けた田口は事実の調査に乗り出すが、倫理問題審査会(エシックス・コミティ)委員長・沼田による嫌味な介入や、ドジな新人看護師・姫宮と厚生労働省の“火喰い鳥”白鳥の登場で、さらに複雑な事態に突入していく。
将軍(ジェネラル・ルージュ)の異名をとる速水の悲願、桜宮市へのドクター・ヘリ導入を目前にして速水は病院を追われてしまうのか…。
そして、さらなる大惨事が桜宮市と病院を直撃する。
（「BOOK」データベースより）
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海堂尊さんの「チームバチスタの栄光」シリーズ第3弾。
私的には「チームバチスタ…」は絶賛ですが、前作の「ナイチンゲールの沈黙」は好みに合わずだったので、この「ジェネラル・ルージュの凱旋」次第で今後読むかどうかを決めようと思っていた。

読み終わって一言。
「ナイチンゲールの沈黙」は「ジェネラル・ルージュの凱旋」の壮大なるプロローグだ。

構成としては、2作が同時進行なので、お互いがお互いのスピンオフです。
始まりなどは、「ナイチンゲール…」と同じ話から始まるので、「本を間違えた？デジャブか？」とあらぬ心配をしたほど(笑)
面白さでは「ジェネラル…」の方が格段に上だと思いますが、「ナイチンゲール…」を読んでいないと、わかりにくい部分が多々あります。
私は流し気味に「ナイチンゲール…」を読んだことを後悔しました(笑)

今回は救急救命の医師の癒着問題に焦点を置いたミステリー(？)だが、しっかりと医療現場の問題と理想を語る。
いや、そもそもその癒着うんぬんが医療現場の問題なのだ。
そして、「チームバチスタ…」で取り上げられたテーマ(AI)もまた出てくる。

・救急救命病棟というのは赤字であることの方が多いという現実。
・病院といえども、利益が出なければ成り立たないという現実。
・外国と違って、日本の医療現場では救急にいる医師の評価が低いという現実。
(とあるニュース番組によると、診療が多岐にわたり、広く浅くであるためとの見解だそうだ。ちなみにアメリカでは逆に評価が一番高い。)

このシリーズを読むと、現在の日本の医療はいいのだろうか？と心配になります。

今回、病院内に設置されている倫理問題審査委員会＜エシックス・コミッティ＞と現場医師のやり取りが執拗なまでに取り上げられていますが、作者としては、国と現場医師の間の壁のつもりなのかもしれません。
「倫理倫理と鈴虫のように」というくだりに笑ってしまった。
大企業となれば、こういう話はどこにでもあるわけで、何に対しても「書類を出せ」だの、「前例がない」だのと言っては仕事放棄しているようにしか見えない。
同じことが医療現場でもあるのかと思うと残念な限りですね。
国も、変なとこにお金使ってないで、もっと有効活用してよね～！なんて思ってしまいました。

この本だけを読んで楽しめるわけではないのが残念ではありますが、納得の一冊でした。
このシリーズを読み続けること確定です☆

ちょっと余談。
この作品映画化されますね。そろそろ公開？
映画化されるというニュースを観た後に読みはじめ、「ナイチンゲール…」とのつながりや、倫理委員会のねちねちさをどう映画化するのだろう？と思っていました。
読み終わった後に、たままた映画館で予告を見たのですが、あまりに原作と違ってて驚きました(笑)
自殺か？殺人か？のような話になっているようですが、あれは映画オリジナルです。
それはそれでどうまとめるのか観たくなりましたけど。

最後にネタバレというか疑問。
最後のほうで、事務長の奥さんが事故に巻き込まれて、諦めかけている事務長を速水先生が怒るシーンがあると思うのですが、結局奥さんって助かった記述ありましたっけ？
図書館に本を返した後に思い出して…。
誰か教えて下さい(笑)